Islands Careとオガサワラカワラヒワ

日本で最も絶滅の危機にある固有の鳥、オガサワラカワラヒワを後世に残したい!

オガサワラカワラヒワ、という名前を耳にしたことはあるでしょうか。名前の通り、小笠原固有の小さな鳥です。島の人からはかつて「クザイモン」と呼ばれていたこの鳥は、様々な環境の変化を原因として数を減らし、そして今まさに人々の記憶からも消えつつあります。このページでは、私たちがオガサワラカワラヒワの保全活動になぜ、そしてどのように取り組んでいるかをご紹介します。



自己紹介とIslands care立ち上げの経緯

はじめまして、一般社団法人Islands care 代表の川口大朗と申します。

私は、世界自然遺産である東京都小笠原諸島で希少動植物の保全活動や自然環境調査を行なっています。

2009年に小笠原に移住し、11年間東京都レンジャーとして国立公園の巡視や絶滅危惧種のモニタリング等に従事してきました。また、レンジャー業務の傍2014年より大学院に在学し、絶滅危惧種であるオガサワラカワラヒワ(以降オガヒワ)の研究を行なってきました。

オガヒワの絶滅の危機を感じ、より主体的に活動をしたいという思いから一念発起し、2020年に前職を退職してIslands care代表となりました。

絶滅の危機に瀕しているオガヒワを救うために、オガヒワを取り巻く様々な調査・保全活動を行っていますが、未だ危機的な状況であることには変わりなく、さらなる取り組みと、「今すぐ」の行動が必要です。そこで地元民間団体である私たちが緊急の保全活動をしていく決意をしました。

写真 左:川口 右:無人島での調査をサポートしてくれる両角


小笠原の自然の現状

小笠原諸島は、本州から南に約1000キロの位置にあり、30余りの島々から成り立っています。一度も陸続きになったことがない海洋島であるため、唯一無二の動植物や生態系が育まれ、2011年に世界自然遺産に登録されました。

しかし、この素晴らしい自然は、人間の活動を含む他所からの影響を受けやすい脆弱さを併せ持っています。

現在、小笠原諸島の自然は人為的に持ち込まれた様々な外来動植物の脅威に晒されており、これまでにも多くの動植物が絶滅し、現在もオガヒワをはじめ、多くの種の絶滅が危惧されています。小笠原諸島の自然は、島内外の多くの人の力によりなんとか守られているのが現状です。

私自身も、その一翼を担うため日々奮闘しています。

写真 オガヒワの生息する島の様子(向島 写真奥は母島) 


オガヒワは絶滅の危機に瀕しています

オガヒワは、小笠原諸島にしかいない小さな陸鳥です。スズメと同じくらいの大きさで、翼の黄色の模様と、体に対して大きなクチバシがトレードマークです。一見地味な鳥ですが、近年の研究により11種類目の日本固有の鳥であると提唱されています。

さらに世界自然遺産の代表的な価値の一つである乾性低木林(乾燥した立地に成立する低い木から成る林)に唯一適応した鳥です。以前は、小笠原諸島全域にオガヒワが生息していましたが、年々減少しており25年間で10分の1程度になりました。その結果、現在は母島列島属島(母島周辺の無人島)と南硫黄島でしか繁殖が確認されていません。

さらに、このオガヒワ絶滅の危機を、小笠原の島民はもとより、多くの人たちが知りませんでした。

■オガヒワのより詳しい情報はこちらのWEBページで知ることが出来ます。

https://ogasawara-kawarahiwa.jimdofree.com/

写真 オガサワラカワラヒワの幼鳥(巣立ち雛)


みんなでオガヒワのために話し合いをしました

写真 ワークショップの様子

オガヒワを日々見守っている地元の調査者や研究者たちが、このままではオガヒワが絶滅してしまう、なんとかしなくてはならないと立ち上がりました。

オガヒワを絶滅の危機から救うために、Islands care と小笠原自然文化研究所が中心となり、2020年12月に約100人以上が参加した「オガサワラカワラヒワ保全計画作りワークショップ」を開催しました。今回採用したPHVA(個体群と生息地の存続可能性評価 )ワークショップ手法は、IUCN(国際自然保護連合)が提唱している、実践的な絶滅危惧種の保全計画を作る手法です。簡単に言うと「絶滅させないために実現可能な方法を、みんなで科学的に考えよう」ということになります。

 

ワークショップ当日は、なぜオガヒワがこんなに減ってしまったのか?繁殖地でネズミに食べられてしまったのか?母島に飛んできた時にノネコに食べられてしまったのか?餌としている植物が不足していたのか?病気が蔓延したのか?超大型台風などで快適な生息地がなくなってしまったのか?など様々な可能性が検討され、これから何をしなくてはならないのか議論されました。

会の終わりには、オガヒワを救うために3年以内に実施しなくてはならない行動計画が策定されました。その中の一つに「オガヒワに関する生物学的な情報収集」があり、当面はIslands careが主体となって実施していくこととなりました。

 

■ワークショップの詳細はYou tubeで報告しています。


すぐに調べる必要があります

Islands careは「オガヒワに関する生物学的な情報収集」を実施することになりました。

主に調査しなくていけないことは以下の内容になります。

ネズミが脅威のようだけど、ネズミがいなくなればオガヒワは復活するの?

ワークショップでは、オガヒワにとって最も脅威になっているのが外来のネズミ類による巣の捕食だとされ、急いでネズミの駆除をしなくてならないということになりました。環境省がワークショップに前後して、オガヒワ繁殖地である母島属島の向島(無人島)でネズミ駆除を開始しました。しかし、ネズミを駆除すれば本当にオガヒワが回復するのかわかりません。オガヒワの個体数の推移を観察して、ネズミ駆除の効果を調べる必要があります。

保護して飼育・繁殖することが必要なようだけど、捕獲しても大丈夫?

野生下の個体だけではオガヒワが回復するのは難しい状況になる可能性が高く、保護して飼育繁殖した鳥を再び野生下に戻すという取り組みが必要だという意見もあります。しかし、数少ないオガヒワが何羽いるのかを調べて、何羽なら捕獲しても大丈夫であるか考えていく必要があります。

オガヒワってどんな場所で子育てしている?

オガヒワがどのような場所を好んで巣を作っているのかは、よくわかっていません。どんな場所で雛を育てているのかを調べ、オガヒワが快適に子育てできる環境を守ることが必要です。

オガヒワは何を食べているか?

オガヒワが減少してしまった原因として、餌となる植物が少なくなってしまったからという意見があります。オガヒワは植物の種子を食べており、その植物が外来植物の侵入や気候変動の影響で数が少なくなったのではと考えられています。オガヒワが何を食べているか調べ、必要に応じて人工的に餌場を作る等の取り組みが必要になってくるかもしれません。

写真 調査の様子(上:センサーカメラの設置 下:観察調査)


調査資金が必要です

オガヒワが生息する無人島に調査に行くためには、船をチャーターする必要があります。オガヒワのことをよく知るためには早朝から夕方まで1日がかりで観察することが必要です。そのような時は、無人島に泊まり込みで調査することもあります。また、自動で撮影してくれるセンサーカメラを設置することにより、人が観察できない期間もオガヒワの動向を把握することができます。

上に挙げたことを実施していくための、調査費用が必要です。特に必要なのは、船のチャーター代やセンサーカメラの購入費用になります。

写真 調査の様子(無人島へカヤックで上陸)


皆様のご支援をお願いします

オガヒワがいなくなっても、私たちの普段の生活には影響はないという考え方もありますが、素晴らしい自然が魅力のこの島で、固有の鳥が絶滅していくのをただ見ていることはできません。

今回、私たちはオガヒワの保全を目的にして活動していますが、この保全活動はオガヒワ以外の生き物たち、また小笠原諸島の自然環境保全全体にもつながっていくと考えています。オガヒワ、そして小笠原諸島のより良い未来のために、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

クラウドファンディング等を通じてご支援いただいた調査費は、船のチャーター、センサーカメラの購入費用のほか、個体数のモニタリング調査、繁殖状況調査、食性調査の他に、より詳しい食性解明のためのサンプル収集、季節移動の調査の購入費用などに充てさせていただきます。

 

引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。